後天性血栓性血小板減少性紫斑病(aTTP)
Disease
血栓性血小板減少性紫斑病(thrombotic thrombocytopenic purpura:TTP)は、全身の微小血管において病的血栓を形成し、無治療の場合は90%以上が死亡する致死性の疾患です。日本国内では難病指定を受けています。近年ではvon Willebrand因子(VWF)切断酵素であるADAMTS13(a disintegrin-like and metalloproteinase with thrombospondin type 1 motifs 13)活性が著減するものを指します(1)。血小板決算による微小血管の閉塞から、脳、腎臓、心臓等の全身の臓器に虚血性臓器障害を引き起こします。TPPの患者さんは、内出血、皮下出血、皮膚表面から出血を起こすことがあり、致命的であったり、脳障害や脳卒中などの後遺症を引き起こします。
Patient
TTPの発症率は年間人口100万人当たり4人、日本国内では年間約500人が発症するとされている、希少難治性血液疾患です(2)。先天性TPPと後天性TPPがあり、後天性TPPが全体の95%以上を占めています。
Current Treatment
現在の治療法は、①血漿交換療法、②ステロイド療法、③抗CD20抗体(リツキシマブ)、④抗VWFナノボディ(カプラシズマブ)があります。近年、TPPの病態理解にも進んでおり、それらに基づいた有効かつ持続的な治療を可能とする薬剤の開発が望まれています。
抗VWFアプタマー TAGX-0004
TAGX-0004は、当社独自技術である人工塩基Dsを含んだヒトVWF A1ドメインを標的とする核酸DNAアプタマーで、ヒトVWFに対して61pMという高い親和性と特異性を示します(3)。治療薬候補は動態改善のためにPEG化したTAGX-0004になります。
TTPでは、血小板GP1bとVWF A1ドメインとの結合によって過剰なVWFマルチマーの凝集が引き起こされる血栓性微小血管障害となるため、血小板とVWFとの結合を阻害することによってTTPの急性期症状を早期に抑制することが期待できます。
TAGCyxでは、TAGX‐0004を用いたヒト血液を用いたEx-vivo試験や、ヒト化マウス血栓症疾患モデルの動物試験において、既存薬であるカプラシズマブと比較して、同等の薬理活性を有することを確認しています(4,5)。
また、当社Xenoligo®核酸アプタマーは合成により作製できるため既存治療と比較しても低コストで安定した薬剤の製造が可能です。さらに、安定性も高いことからReady-to-useのプレフィルドシリンジとして開発を進めることで患者さまの利便性を向上させることが期待できます。
TAGCyxでは、TAGX-0004の非臨床試験を進め、早期の臨床試験入りを目指しています。
[Reference]
- 公益財団法人 難病医学研究財団/難病センターWeb site: https://www.nanbyou.or.jp/entry/87
- 血栓性血小板減少症紫斑病(TTP)の病態,診断と治療 酒井和哉、松本雅則 日本内科学会雑誌 2020; 109; 1355.
- High-Affinity DNA Aptamer Generation Targeting von Willebrand Factor A1-Domain by Genetic Alphabet Expansion for Systematic Evolution of Ligands by Exponential Enrichment Using Two Types of Libraries Composed of Five Different Bases Matsunaga K. et al. J Am Chem Soc. 2017; 139: 324.
- Novel aptamer to von Willebrand factor A1 domain (TAGX-0004) shows total inhibition of thrombus formation superior to ARC1779 and comparable to caplacizumab Sakai K. et al. Haematologica. 2020;105:2631.
- 動脈血栓症治療のためのVWF A1ドメインと血小板GP Ib結合を阻害する新規アプタマーの開発臨床血液 松本雅則、原田香織 2022; 63: 393.