PMPC
アプタマーの体内動態における課題
アプタマーの体内動態における課題の一つが血中滞留時間が短いことです。アプタマーはその分子サイズから単体では血中滞留性が低く、すみやかに腎臓から排泄されます。現在アプタマーの血中滞留時間を延長するためにアプタマー/PEG複合体が多く使用されていますが、抗PEG抗体が産生されることが知られており、それによる薬効減弱やアナフィラキシーショックが問題となります。
この課題を解決するためには、免疫原性がなく、結合によりアプタマーの活性に影響がないPEG以外の分子によるアプタマーの血中滞留性の改善が必要となります。
PMPC[ポリメタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン]
PMPCは細胞を構成する細胞膜のホスファチジルコリンの極性基をもつ、2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン(MPC)を構成単位とするポリマーであり、細胞膜(生体膜)を模倣して分子設計されたポリマーです。生体に馴染みやすいリン脂質類似構造を持つため、抗原性が低く医療器具や人工臓器の表面に使用されています。このPMPCを用いて我々のアプタマー Xenoligo®の体内動態の改善効果を東京大学工学部山東研究室と共同で行いました。
Xenoligo® /PMPC複合体
PMPCをXenoligo®に結合し、 Xenoligo®の活性への影響および体内動態を検討した結果、PMPC結合によるXenoligo®の活性に変化なく、PEGと同等の体内動態を示すことを確認しました。またPMPCの重合度を変えることでアプタマーの血中滞留性をコントロールできることも確認しました。
PMPCは免疫原性が低く、 Xenoligo®の活性に影響することなく血中滞留性を向上させることから、アプタマーを体内動態コントロールするのに非常に有用な分子であることが示されました。
Xenoligo® /PMPC複合体の阻害活性
IFN-γに結合するXenoligo® であるTAGX-0003にPMPCを修飾し、TAGX-0003/PMPC複合体を作成し、TAGX-0003/PEG複合体、TAGX-0003との活性を比較しました。
その結果、TAGX-0003と比較してTAGX-0003/PEG複合体は抑制活性が若干低下するのに対して、 TAGX-0003/PMPC複合体は活性に影響しないことが確認できました。
Xenoligo® /PMPC複合体の血中動態
重合度50、100、200および400のPMPCを用いてXenoligo®(TAGX-0003)/PMPC複合体を合成し、ラットに単回静脈内投与後、経時的に血中濃度を測定し、TAGX-0003およびTAGX-0003/PEG複合体と比較しました。その結果、PMPCの重合度の増加に伴い、TAGX-0003と比較して、血中滞留性が向上し、重合度400のPMPCとTAGX-0003の複合体においてTAGX-0003/PEG複合体と同様の血中濃度推移を示しました。PMPCは免疫原性が低く、アプタマーの活性に影響することなく血中滞留性を向上させることから、 Xenoligo®のPKコントロールに有用な分子であることが示されました。